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中国服のブレヒト
によって 長谷川 四郎
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月刊雑誌『みすず』の1970年7月号から1972年5月号まで10回にわたり連載された文章を全面的に改訂して1冊の本にしたという。ある1冊の外国の本を翻訳してそれに解説を付けてだすというやり方ではなく、翻訳の部分は少なく解説の方が多い。その外国の本というのがドイツの詩人で劇作家ブレヒトの散文『Me Ti』つまり『転機の書』として日本で知られているものだ。これは中国哲学の衣を着用したマルクス主義、コミュニストのモラルを説いたものと言っていいが、ブレヒトの語るマルクス思想は独特だ。それが中国哲学の中で最も後世に誤解されている墨子の言葉に翻訳されるとどうなるか。長谷川四郎はブレヒトの中でも、最も難解な作品を選んだ。しかし『転機の書』は難しくない、ということがこの本を読んでわかった。解説は鮮やかで軽妙。ブレヒトのもう一つの散文作品『コイナさん談義』もこの著者の筆にかかると、わかりやすい。ドイツ人でも墨子を理解できる。中国人でもブレヒトを鑑賞できる。しかしブレヒトの描く墨子を牧野謙次郎『墨子国字解』や幸田露伴・竹内好(魯迅)・林達夫などを援用しつつ、ブレヒトの政治志向や「易」と「弁証法」を説くなどということは日本人の中でも、漢文とマルクスをふくめたドイツ文学の教養をあわせもつ、この著者以外にはできない。東ドイツに亡命しスターリン主義を黙認したかに見えるブレヒトを非難したハンナ・アレントに対し、ブレヒトを弁護して反駁するところは、長谷川自身の社会主義観やシベリアに抑留された体験が発言の根拠となっていて、思わず襟をただした。
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