Newton (ニュートン) 2011年 12月号 [雑誌]

「加速器を使って実験を行っている私たちほど、相対論を身近に感じ、その正しさを肌で感じでいる人間はいません。しかし、『ニュートリノが光速で進んだと考える場合より、60ナノ秒（1億分の6秒）速く検出器に到達した』という実験結果は、観測の間違いや誤差だとは思えないのです」（国際研究チームによるOPERA実験の論文に名を連ねた小松准教授）9月23日に、CERNの共同チームが行ったOPERAと名づけられた実験で、ニュートリノが光速を超えるスピードで進んだことが検出されたという報道があった。これについての4ページの特集が載っていたので買ってみた。ただ現実には、多くの学者が懐疑的に受け止めているという。ニュートリノの速度については超新星爆発のガンマ線バーストから放出された際の観測結果と矛盾しているからだ。ただ、もし事実だとすると、ニュートリノはタキオン（超光速を超えてそれを下回れない物質）の資質を持つ可能性がでてきてしまうとか、ブレーンワールド仮説の紹介もある。Newton Specialは「光速」について。元々予定されていた特集が、先ほどのニュースとたまたま同じタイミングになったのであれば、なかなかの偶然。もちろん、ニュートンらしいビジュアルな解説によって、あまり物理に明るくない人でも、光とはなんであって光速度普遍の法則というのはどういう意味をもつのかがわかるように易しく説明されている。この特集で個人的に面白かったのは、相対論と量子論の矛盾を解決する為の有力な仮説を出している海外の4名の学者のメールインタビュー。どれも短いが、含蓄のあるコメントが述べられているところもある。地味だけれども健康面で役に立つかもしれない特集として、「栄養素は体でどうつかわれている？」をまず挙げたい。食べ物と健康については、いろいろ怪しげな本もあるが、やはりこういう知識を理解することでさまざまな種類の食品を摂るようにするのが基本だなと改めて思う。後半には「涙」の特集もある。健康に関する気になるニュースとしてもうひとつ。実は今年の春は北極海域で大規模なオゾン層破壊があったそうで、日本でも4月末に観測された紫外線の量は例年の1.5倍に達していたとか。オゾン層破壊は北極圏より気温が低い南極圏で多いが、今年は北極圏上空でもマイナス80度を切る低温状態が長期間続いたことでオゾン層破壊をもたらす極成層圏雲（SPC）が発生したという。そうなった根本原因として温室効果ガス排出量との関係性を指摘している学者もいるようだ。写真特集で凄いのは、ボリビアのウユニ塩原。「天空の鏡」と称される塩の平原の様子は息をのむ。じつは、ここは世界のリチウム埋蔵量の半分が集中しているとか。2009年に世界遺産に登録された五台山の写真も良い。土星のオーロラや、白亜紀後期の地層から発見された羽毛を含んだ琥珀の化石の写真もある。